健康寿命と医療費

最近「健康寿命」という言葉をよく耳にします。健康寿命とは「日常生活に制限のない期間の平均」とされていますが、言い替えれば「自力で元気に生活できる期間」のことです。

平成22年の厚生労働省の資料では、健康寿命は、男性70.42歳、女性73.62歳となっています。平均寿命が男性が79.55歳、女性が86.30歳なので、日常生活に何らかの制限がある期間は、男性が9.13年、女性が12.68年となります。

これを見ると、およそ10年もの間介護が必要で大変だと思われるかもしれませんが、必ずしもそういうことではありません。不自由さを感じながらも自立している方は大勢おられますし、少しの介助があれば生活できる方もおられます。加齢は徐々に進行するもので、実際に寝たきりになる期間は2、3年です。

ところが、脳梗塞、心筋梗塞、骨折などの病気を発症すると一気に要介護状態となり、元気に生活…とはいかなくなります。健康寿命を伸ばすためには病気の予防が重要なのです。

日本は2025年には3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という超高齢社会に突入します。国民医療費も年々増加しており、2025年には54兆円にまで膨らみ、このままいくと日本の社会保障制度自体が崩壊するといわれています。健康寿命を延ばすことで医療費の削減ができると言われていますが、健康寿命が延びることで逆に医療費がかさむという考えもあり、どちらが正しいのかはわかりません。ただ、医療費以外も含めて長生きするとそれだけお金がかかるのは事実です。

いずれにせよ、これからはなるべくお金をかけずに元気に長生きすることを考えていかないといけませんね。

 

水分の摂り方

今年は記録的な猛暑で熱中症患者数が増加しています。熱中症予防には水分摂取が重要なのはみなさんご存知のところだと思いますが、水分を十分に摂っているのに体がだるい、食欲がないという方はいらっしゃいませんか?それは水分の摂り方に問題があるのかもしれません。

 

必要な水分量

体重50kgの成人の場合、1日に尿や汗などで2,500mlの水分が体内から出ていきます。このうち食事などから1,300mlは補てんされるので、1日に必要な水分量は1,200mlとなります。これより体重の重い方、発汗の多い方、下痢・嘔吐のある方、授乳中の方などは、より多くの水分が出ていくのでこれ以上の摂取が必要ですし、食事をあまり摂らない方は、補てんされる水分が少ない分、より多くの摂取が必要となります。しかし、水分補給と言っても逆に水分を摂り過ぎるのはよくありません。一度に多量の水分を摂ると体液が薄まり、体調不良の原因になります。1日に必要な摂取水分量を1,200mlとすると、1回150~200mlほどを1日6~8回に分けて、こまめに摂取するようにしましょう。

 

飲み物の温度

常温(20~35度)は胃腸に負担が少なく水分補給に最も適した温度です。スポーツや入浴後は冷水(5~15度)もいいでしょう。のどが渇いたときにキンキンに冷えた飲み物は美味しいですよね。でも、冷たすぎる飲み物は胃腸を弱らせ食欲を低下させます。十分に水分を摂っているのに体がだるい、食欲がないという方の多くは、冷たいものを多量に飲んでいるケースが多いようなので注意してください。逆に温水(60~80度)は冷えた体を温めリラックスさせる効果があります。

 

さて、一口に水分補給と言いますが、液体ならすべて補給に適した「水分」となるわけではありません。皆さんは水分として何を飲んでいますか?

 

アルコール

「ビールで水分を摂っているから大丈夫」という方がいますが、アルコールは腎血流を増加させるため、摂った以上に水分が尿に出てしまい脱水になります。アルコールは補給するための「水分」だと考えないでください。飲酒時は別に十分な水分の補給が必要です。お店でウイスキーをストレートで頼むと「チェイサー」と呼ばれる水を出してくれます。昔は「ノーチェイサーで」とオーダーすると恰好良かったのですが、今は脱水予防で「チェイサー」を飲むほうが意識が高いと思われて良いかもしれませんね。他のアルコールも水といっしょに摂取するほうがいいようです。

 

ジュース

ジュースは糖分が多いため大量に摂取すると「ソフトドリンクケトーシス」「ペットボトル症候群」と呼ばれる状態になります。これは過剰に摂取した糖により高血糖となり、利尿による脱水を起こします。また血糖を低下させるインスリンの作用が弱まり糖がエネルギーとして利用できず、替りに脂質、たんぱく質が動員されケトーシスという状態になり、全身倦怠感、吐き気、酷い場合意識障害を起こすことがあるため注意が必要です。ジュースは水分補給には向きません。糖質の過剰摂取にもなりますので、あくまで嗜好品として飲むようにしましょう。

 

カフェインを含む飲料

水以外の水分補給としてお茶を飲んでいる方は多いと思いますが、お茶に含まれるカフェインには利尿作用があります。玉露、煎茶、ほうじ茶、紅茶、ウーロン茶などは比較的カフェインを多く含みます。特に玉露は煎茶の8倍のカフェインがあります。お茶以外ではコーヒー、ココア、コーラなどにもカフェインが含まれています。カフェイン含有量の多い順は、玉露>レギュラーコーヒー>抹茶>煎茶=ほうじ茶=ウーロン茶=ココア>番茶=玄米茶です。

一般的に水分補給でカフェインを含むものは推奨されていませんが、カフェインを含む飲料を飲んだら必ず尿量が増えるというわけではないようです。コーヒー好きで1日4,5杯は飲むという方が皆脱水状態だとは思えません。カフェインには耐性があるそうで、利尿作用にも個人差があるように思います。飲んでも尿量が増えない方は問題ないのかもしれません。しかしながら、水分補給としてはカフェイン含有量が少ないほうが好ましいので、なるべく水、麦茶、ルイボスティーなど、カフェインを含まないもので水分補給をするほうが確実です。どうしてもコーヒーや緑茶などが飲みたい方は、水出しにすればカフェインを減らすことができるので試してみてはいかがでしょう。

 

水・経口補水液

水は水分補給に最も適した飲み物です。しかし、発汗時は汗とともにナトリウムも失われますので、汗を多くかいた時は経口補水液などで水といっしょに塩分も補給しましょう。また経口補水液にはブドウ糖が含まれていますが、ブドウ糖は腸管での水分の吸収を促進します。また速やかにエネルギーになり活動しやすくなるので、特にスポーツ時は経口補水液がいいでしょう。但し、塩分制限が必要な方や糖尿病の方は自己判断で摂取せず、必ず医師に相談してください。