動脈硬化の検査

では動脈硬化はどうやって調べるのでしょう?

 

血圧/脈圧/平均血圧

血圧測定はもっとも簡単に動脈硬化を推測できる検査です。

「血圧」は収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)を測る検査です。至適血圧とされる120/80未満を超えて高くなるほど動脈硬化が疑われ、心血管病,脳卒中,心筋梗塞,慢性腎臓病などの罹患リスクおよび死亡リスクは高くなるとされています。

「脈圧」は収縮期血圧と拡張期血圧の差を指します。正常値は40~60で加齢により脈圧は増大しますが、脈圧が大きい場合は比較的太い血管の動脈硬化が疑われます。

「平均血圧」は(収縮期血圧 -拡張期血圧)÷3 +拡張期血圧で求められ、正常値は90未満です。平均血圧が高いと末梢の細い血管の動脈硬化が疑われます。

例えば、血圧が119/73の人は至適血圧で脈圧46、平均血圧は88です。この人の収縮期血圧が上がり139/73になっても高血圧症の基準は満たしません。ところが脈圧は66、平均血圧は95となり、いずれも異常値で動脈硬化が疑われます。血圧のみならず、脈圧、平均血圧にも注意が必要です。

 

血液検査

脂質代謝、血糖、尿酸などをしらべます。

動脈硬化に対し悪玉コレステロール(LDL)は促進的、善玉コレステロール(HDL)は抑制的に働きます。両者のバランスが重要と考えられ、最近LDL/HDL比で動脈硬化を評価することも多くなってきています。

また、中性脂肪(TG)、LDLは食事の影響を受けやすいので10時間以上の絶食採血が必要ですが、食事をした状態で検査する場合は総コレステロール(T-CHO)とHDLの比率を用いることがあります。

TGは直接動脈硬化を起こすわけではありませんが、特定健診の診断基準の項目はLDLではなくTGです。これは内蔵脂肪の蓄積にTGが深く関わっており、LDLは内蔵脂肪の程度と関係なく動脈硬化に関与するからです。

高血糖、高尿酸血症も動脈硬化を疑う根拠になります。

 

血圧脈波検査

血管の硬さ(脈波伝播速度)と詰まり具合(上腕と足首の血圧比)を調べます。

脈波伝播速度:心臓から押し出された血液により生じた拍動が動脈を通じて手や足に届くまでの速度のことで、動脈が硬いほど速くなります。

上腕と足首の血圧比:上腕と足首の血圧の比を測定することで血管の狭窄の程度を調べます。一般に下肢の動脈のほうが詰まりやすいとされており、値が低いほど動脈が詰まっていることを示します。

動脈硬化の有無を調べるスクリーニングに向いていますが、血圧や心臓の状態の不安定な方には向きません。

 

頸動脈エコー

粥状動脈硬化のみられる比較的太い動脈の代表である頸動脈を直接観察する検査です。主として左右の頸動脈と椎骨動脈の4本を検査します。

頸動脈の壁の厚さである内膜中膜複合体厚(IMT)、血管径、プラーク(粥状変化の塊)、頸動脈の血流、頸動脈の狭窄が可視化でき、同時に計測が可能です。

体への侵襲が少なく簡単な検査です。スクリーニング検査のみならず、長期的な経過観察に大変有用でので、動脈硬化の関連する疾患のある方には是非お勧めしたい検査です。

当院では動脈硬化の危険因子のある方や、めまいなど脳血流異常が疑われる方のスクリーニングの他、IMTの肥厚やプラークの変化をみて、脂質異常症の治療効果の判定などにも活用しております。