帯状疱疹を予防するワクチン

帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘帯状疱疹)ウイルスの感染後、神経節に潜伏感染しているウイルスが、加齢や免疫力の低下などで再活性化することによって起こる病気です。80歳までに3人に1人が帯状疱疹を経験するといわれています。

帯状疱疹を発病すると体の左右いずれかに水膨れを伴った赤い斑点が出現し、ピリピリとした痛みを伴います。帯状疱疹として他人に感染することはありませんが、水膨れにはウイルスが存在し、未感染の子供さんが接触すると水ぼうそうとして感染します。

顔面の帯状疱疹では、角膜炎や結膜炎などを起こすことがあります。その他、まれに耳鳴りや難聴、顔面神経麻痺などが生じることがあり、これをハント症候群と呼びます。帯状疱疹の合併症として帯状疱疹後神経痛(PHN)を起こすと、夜も寝られないほどの痛みが続いて生活に支障をきたすことがあります。加齢はPHNの重要なリスク因子とされています。

帯状疱疹に対しては抗ウイルス薬投与と、痛みに対しては鎮痛治療が行われますが、発病予防として平成28年から水痘帯状疱疹ワクチンの適応が追加され、50歳以上の方を対象に任意で接種できるようになっています。

50歳からの帯状疱疹と合併症予防のためにワクチンを接種しましょう。

 

内蔵脂肪を測ってみる

内臓脂肪型肥満は動脈硬化性疾患に繋がるという話をしましたが、実際に内臓脂肪がどれくらい溜まっているのかがわかる検査があります。ボディーバランス検査(体組成検査)です。

体組成検査は、人間の体の4大構成成分である、筋肉、骨、脂肪、水分の比率を測定することにより、筋肉量と脂肪量、内臓脂肪と皮下脂肪、基礎代謝、部位別(両上下肢、体幹)の筋肉量などの項目で体の状態を診断します。

腹部CT検査で内臓脂肪面積が100㎠以上を内臓脂肪過剰と判定しますが、体組成計はCT並みの精度で内臓脂肪の測定ができるのでメタボチェックも簡単。およそ1分程度で体の状態が診断できます。

内臓脂肪型肥満、かくれ肥満の他、筋肉量から将来の要介護の可能性の推測、食事や運動の目標の設定と治療の効果判定などに役立つ検査です。

保険点数がないため、当院で通院中の方には無料で検査を行っていますが、体験も可能なので、ご希望の方は一度お問い合わせください。

 

動脈硬化の検査

では動脈硬化はどうやって調べるのでしょう?

 

血圧/脈圧/平均血圧

血圧測定はもっとも簡単に動脈硬化を推測できる検査です。

「血圧」は収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)を測る検査です。至適血圧とされる120/80未満を超えて高くなるほど動脈硬化が疑われ、心血管病,脳卒中,心筋梗塞,慢性腎臓病などの罹患リスクおよび死亡リスクは高くなるとされています。

「脈圧」は収縮期血圧と拡張期血圧の差を指します。正常値は40~60で加齢により脈圧は増大しますが、脈圧が大きい場合は比較的太い血管の動脈硬化が疑われます。

「平均血圧」は(収縮期血圧 -拡張期血圧)÷3 +拡張期血圧で求められ、正常値は90未満です。平均血圧が高いと末梢の細い血管の動脈硬化が疑われます。

例えば、血圧が119/73の人は至適血圧で脈圧46、平均血圧は88です。この人の収縮期血圧が上がり139/73になっても高血圧症の基準は満たしません。ところが脈圧は66、平均血圧は95となり、いずれも異常値で動脈硬化が疑われます。血圧のみならず、脈圧、平均血圧にも注意が必要です。

 

血液検査

脂質代謝、血糖、尿酸などをしらべます。

動脈硬化に対し悪玉コレステロール(LDL)は促進的、善玉コレステロール(HDL)は抑制的に働きます。両者のバランスが重要と考えられ、最近LDL/HDL比で動脈硬化を評価することも多くなってきています。

また、中性脂肪(TG)、LDLは食事の影響を受けやすいので10時間以上の絶食採血が必要ですが、食事をした状態で検査する場合は総コレステロール(T-CHO)とHDLの比率を用いることがあります。

TGは直接動脈硬化を起こすわけではありませんが、特定健診の診断基準の項目はLDLではなくTGです。これは内蔵脂肪の蓄積にTGが深く関わっており、LDLは内蔵脂肪の程度と関係なく動脈硬化に関与するからです。

高血糖、高尿酸血症も動脈硬化を疑う根拠になります。

 

血圧脈波検査

血管の硬さ(脈波伝播速度)と詰まり具合(上腕と足首の血圧比)を調べます。

脈波伝播速度:心臓から押し出された血液により生じた拍動が動脈を通じて手や足に届くまでの速度のことで、動脈が硬いほど速くなります。

上腕と足首の血圧比:上腕と足首の血圧の比を測定することで血管の狭窄の程度を調べます。一般に下肢の動脈のほうが詰まりやすいとされており、値が低いほど動脈が詰まっていることを示します。

動脈硬化の有無を調べるスクリーニングに向いていますが、血圧や心臓の状態の不安定な方には向きません。

 

頸動脈エコー

粥状動脈硬化のみられる比較的太い動脈の代表である頸動脈を直接観察する検査です。主として左右の頸動脈と椎骨動脈の4本を検査します。

頸動脈の壁の厚さである内膜中膜複合体厚(IMT)、血管径、プラーク(粥状変化の塊)、頸動脈の血流、頸動脈の狭窄が可視化でき、同時に計測が可能です。

体への侵襲が少なく簡単な検査です。スクリーニング検査のみならず、長期的な経過観察に大変有用でので、動脈硬化の関連する疾患のある方には是非お勧めしたい検査です。

当院では動脈硬化の危険因子のある方や、めまいなど脳血流異常が疑われる方のスクリーニングの他、IMTの肥厚やプラークの変化をみて、脂質異常症の治療効果の判定などにも活用しております。

 

動脈硬化の話

心臓が血液を送り出すポンプだとすれば、動脈は血液を全身に運ぶホースです。動脈硬化とは文字通りその「ホース」が硬く弾力が失われた状態になることです。

 

動脈の構造と働き

動脈は内膜、中膜、外膜の3層構造になっています。内膜は血液から物質の取り込みを行い血液を守る働きがあります。中膜には平滑筋があり、血管のしなやかさと弾力を保ち、外膜は血管を支持し外部から守る役割があります。

 

動脈硬化は、粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)、細動脈硬化、中膜硬化(メンケベルグ型硬化)に分類されます。

 

粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)

粥状動脈硬化は脳動脈や冠動脈などの比較的太い動脈に起こる動脈硬化です。血管の内側を覆う内皮細胞が、高血圧や高血糖などで傷つけられると、そこに悪玉コレステロールが蓄積しアテローム(粥状硬化巣)ができます。

アテロームが大きくなると血管の内腔が狭窄が起こり狭心症などの原因となります。さらに破綻した部位に血栓ができると血管が詰まり心筋梗塞などを起こします。

 

細動脈硬化

脳や腎臓の細い動脈に起こる動脈硬化です。加齢や高血圧症により動脈が弾力性を失い、もろくなった血管が膨らむと脳動脈瘤となり、破綻すると脳出血を起こします。

 

中膜硬化(メンケベルグ型硬化)

大動脈や下肢の動脈、頸動脈に起こる動脈硬化です。中膜にカルシウムが溜まり石灰化が起こります。内膜が侵されないので狭窄は生じませんが、血管の伸縮性は失われ、破綻すると生命に関わる大出血を起こします。

 

内蔵脂肪蓄積と関わりが深いのは粥状動脈硬化で、血液と接している内膜の内皮細胞の障害がキーポイントになります。ちょうど皮膚のバリア機能が失われると肌荒れを起こすようなイメージでしょうか。そう考えると、血液が健康だと内皮細胞も余計なストレスを受けずに健康な状態を保てるはずです。

動脈硬化という側面からみて、加齢や性別(男性のほうが動脈硬化を起こしやすい)、遺伝的な要因は防ぎようがありませんが、生活習慣が関与した高血圧、脂質異常、高血糖、喫煙、肥満などの危険因子による内皮ストレスは減らすことはできます。

今どき男子は‘肌ケア’が大好きなようですが、女性も男性もスキンケアをするように、動脈硬化の予防のために健康な血液で血管の‘内皮ケア’をしましょう。

 

健診で己を知る

メタボで予防したい心臓病、脳卒中などを引き起こすのは動脈硬化です。動脈硬化は知らない間に進行していくため、メタボ対策はできるだけ早い時期から始めるべきですが、「肥ってきたから痩せよう」ではなく、病気のリスクがどれくらいで、どういう予防、治療が必要なのか、自分の状態を知ることから始めましょう。

「彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず」

病気や巷の情報だけでなく、自らを知ることは治療戦略上大切です。

 

特定健診ではメタボリックシンドロームの危険因子として以下の項目(太字)をチェックしています。

 

まず肥満の指標であるBMI(Body Mass Index)を計算します。

BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)

BMIが18.5未満は「やせ」、18.5以上25未満は「標準」、25以上は「肥満」に相当します。

例えば、身長175cm、体重75kgの人のBMIは、75 ÷ 1.75 ÷ 1.75 = 25.95で「肥満」となります。

 

次に腹囲を測定します。腹囲は内臓脂肪の量と相関するといわれています。

腹囲は立った状態で、へその高さで巻尺を水平にして測定します。

腹囲が男性85㎝以上、女性は90㎝以上で、治療中を含め、血圧糖代謝脂質代謝の基準のうち1項目に該当すれば「予備軍」、2項目以上に該当すれば「メタボリックシンドローム」となります。

 

生活習慣では喫煙が重要な危険因子です。

 

健康診断を受けたことのない方は一度検査を受けましょう。肥満やメタボの基準に当てはまらなかった方も、家族歴や他の危険因子があれば、将来動脈硬化を起こす可能性があり注意が必要です。

 

内臓脂肪型肥満は危険

体についた脂肪「体脂肪」には皮下脂肪と内臓脂肪があります。

肥満はどちらの脂肪の蓄積が優位かによって「皮下脂肪型肥満」と「内臓脂肪型肥満」に分けられます。

皮下脂肪型肥満は、皮下組織に脂肪が過剰に溜まった状態で、比較的女性に多いタイプの肥満です。一方、内臓脂肪型肥満は、おなかの腸の周りに脂肪が過剰に付着した状態で、どちらかというと男性に多いタイプの肥満です。

 

内臓脂肪の過剰な蓄積は代謝異常を引き起こし、高血糖、高血圧、脂質異常が組み合わさって心臓病や脳卒中の原因となります。このような状態はメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と呼ばれています。

中には肥満であってもリスクが少ない人や、逆に肥満がなくてもリスクがある人が存在するためメタボの基準の見直しも検討されているようですが、メタボリックシンドローム(以下「メタボ」と略します)になると糖尿病発症の危険が3~6倍、心血管が関わる病気になり死亡する危険がおよそ2倍になるとされれています。

これらを予防することがメタボの治療目標で、治療の基本は食事療法と運動、禁煙などの生活習慣の改善です。

 

しかし、生活の‘習慣’を直すのは容易ではありません。巷にグルメ情報が溢れる反面、いろいろなダイエット法が紹介され、健康ブームに乗って何かと「ヘルシー」という形容詞がつくこの頃、誘惑に打ち勝ちメタボを解消することが必要なのはわかっているものの、そこまで危機感がない、具体的にどうすればいいのかわからない、とりあえずやってみたが続かない、止めたらリバウンドして肥った、酒、たばこは止められない、なにより仕事が多忙でそれどころではないという方は多いと思います。そういう方も一度自分の状態は確認しておく必要がありますので、メタボ健診を受けていただき、結果で問題があれば医療機関を受診してください。

 

検尿で何がわかるの?

診察を受ける時に「おしっこ採ってください」と言われますが、何で尿を採るのか疑問に思う方も多いと思います。

実は、尿には非常に多くの情報が入っていて、尿をみることで病気の推測ができるのです。

 

検査する項目と疑われる病気についてみてみましょう。

【尿蛋白】腎炎・ネフローゼ・尿路感染症など。

【尿糖】糖尿病・膵臓病。

【尿潜血】尿路結石・膀胱炎・前立腺炎・ポリープ・癌など。

【ケトン体】糖尿病・アシドーシス・発熱・消耗性疾患など。

【ウロビリノーゲン】肝障害・溶血性貧血・便秘など。

【ビリルビン】肝疾患・胆道疾患など。

【尿pH】アルカリ性だと尿路感染症など。酸性の場合は、糖尿病、腎炎、痛風など。

一般検尿で異常があれば尿沈渣で尿中の細胞を顕微鏡で調べ、病気の部位や程度を判断します。

 

このように少しの尿で多くの病気が推測できるのです。

 

当院でできる検査ではありませんが、麻薬やドーピングのチェックも尿でしますし、尿の腫瘍マーカーで癌の診断を行う研究もされています。また最近の話題として、線虫を用いて尿で癌の早期発見をするという研究もされており、将来実現するかもしれません。

余談ですが、尿の色が黄色いのは、処理された赤血球からできたウロビリノーゲンの色のためで、色の濃さは水分量に影響されます。

臭いや外見の異常も重要で、甘酸っぱい臭いは糖尿病の疑い、泡が立つ場合は蛋白が出ている可能性があります。血尿や混濁尿は明らかな異常なので診察を受けましょう。

 

医療安全対策

当院の取り組みで重要な課題の一つが医療安全対策です。

ミスが多いと安心して通院していただけませんのでスタッフ全員でこの課題に取り組んでいます。

 

基本の柱は、①医療安全 ②感染症対策 ③保健(健康管理)です。

 

詳細な内容は省略しますが、過去の事例を省みてマニュアルを作成し、リスクの軽減に努めています。通常の診察の流れの中で何度も確認作業がありますので、少し診療に時間がかかるかもしれません。

 

診療所も病院と同じレベルで対策が必要だと考えています。

お気づきの点があればご遠慮なくご指摘ください。

 

 

顔が見える医療

当院では日常のいろいろな疾患の診療を行っていますが、より高度な検査や治療が必要になった場合は専門の医療機関に紹介する必要があります。その際の連携の強化は診療所のみならず、通院されているみなさまにとっても大変重要な課題です。

医師同士は紹介時に『診療情報提供書』という書状で患者情報の伝達を行います。それだけでも特に問題はないのですが、連携が上手くできているとより迅速で正確な情報共有ができます。「何かあれば直ぐに紹介してもらえる」「紹介してもらって良かった」と言っていただける状況になれば、みなさまにより安心して通院していただけるであろうと考えています。さらに在宅医療においては、家族、ケアマネージャー、訪問看護ステーション、連携医療機関など様々な人や組織と情報交換して、医療や介護サービスを決定し提供しなければなりませんので連携は大変重要なのです。

連携をうまく機能させるためには直接担当者と会うことが有効です。会えば情報のみならず考えていることや思いも伝えられます。病院の医師と紹介のたびに会うのは困難ですが、face to faceで密に連絡を取って、ちょっとしたことでも気軽に相談できる関係になれば、よりきめの細かい質の高い診療ができると考えています。

連携強化のための当院の取り組みとして、用件が発生した際に担当するいろいろな人と面会したり、病院などが主催する研究会などの会合などに参加し、機会があれば紹介先の医師と情報を交換するようにしています。地味な話ですが、患者のみなさんを中心とした、連携する人々の「顔が見える医療」が当院の目指すところです。

 

 

予防接種の予約システムについて

2017年6月1日から予防接種のweb予約ができるようになりました。

従来通り電話予約もできますが、web予約なら診療時間外でも予約が可能です。

予約日の前日にメールでお知らせが届くので、うっかり忘れてても大丈夫です。

 

事前に情報の登録が必要なので、お手数ですが下記の予約受付サイトにアクセスしていただき、アカウントの取得ならびに患者情報の登録をお願いいたします。

https://e-chusya.com/39931/top.php

登録は無料です。登録された個人情報は他の目的で使用いたしません。